実証実験の概要
背景と課題
埼玉県飯能市山間エリアは、東京都池袋から電車等で約1時間という至近距離にありながら、面積の約80%を森林が占める山岳地域です。そのため生物多様性に富み、清流や温泉などにも恵まれ、このエリアの暮らしや産業は、昔から山や川などの自然に溶け込んで発展し、魅力的な独自の産業等を育んできました。
一方で、自然豊かな環境にありながら、観光名所と呼ばれるようなロケーションは少なく、また宿泊施設や飲食店も充実しているとは言いがたい状況があります。そのためビジターの多くは、日帰りで登山や温泉を楽しみ、都内など市街地エリアに帰るというパターンがほとんど。あるいは近年数をより増やしたキャンプ施設などを利用してその施設内だけで訪問を完結させる、または、バイクや自転車のツーリングで秩父方面などに移動する際の通過点として訪問するというケースが大半です。
恵まれた自然環境やそこに住むあたたかな人々に魅力を感じ、Uターンや移住をしてくる人も少なからずいる飯能市山間エリアですが、全国の中山間地域同様、緩やかな過疎化と地域経済の衰退は免れていません。結果、森林整備が行き届かなくなってきており、山林の荒廃・土砂災害の懸念・都市部への水源供給機能維持の懸念が問題となっております。それらを解決するためには、ビジターの増加はもちろん、観光だけではない魅力をしっかりと訴求し、長期滞在での人とお金の循環を促進することが重要。その確立が、飯能市山間エリアの大きな課題となっているのです。